「ロイヤル」なトレンド復活 30歳前後をターゲットに

「エロカワイイ」から「ロイヤル」へ――。一世を風靡(ふうび)した神戸系セレブカジュアルファッションに代わって、今年春からは30歳前後の女性に向けた上品な雰囲気の大手アパレルの新ブランドが出そろう。この世代は消費の担い手として重視されているだけに、傾向の大きな変化が注目されている。(スガワラトレンド研究所・菅原健二)
去年までのエロカワイイは、大胆なセクシーさと少女風の幼い感覚が微妙にミックスされているのが特徴だった。それに対して、今年の新ブランドは「ロイヤル」と表現できそうな気品ある上質感、上品なセクシーさを打ち出している。
 その先駆けが、7年前に誕生し、この世代に人気急上昇中の「ダブルスタンダードクロージング」(フィルム)だ。今春は、故ケネディ大統領のジャクリーン夫人に代表される50~60年代のファッションがテーマ。テーラードジャケット、端正なドレスなど、気品と上質感が特徴だ。
 このブランドのデザイナー滝野雅久をチーフデザイナーに迎えて2月にデビューするのが、オンワード樫山の新ブランド「ノーブルバース」。「デザイン的な鋭さがありながらも、清潔でエレガント。実用性の高い服」と同社。
 去年秋にデビューしたフランドルの「クリーシェ」、ワールドの「グロウジェニック」も同世代向け。やや「エロカワイイ」の味を残しながらも、かちっとしたネクタイやフリルのないブラウスなどが、以前よりぐっと大人っぽい気品を見せている。
 この世代に人気のブランド、三陽商会の「フラジール」「エポカ」も、今春は気品あるデザインをより強化して、前評判が高い。
 服に限らず、たとえば車では、去年秋フルモデルチェンジしたホンダの「CR―V」は、四駆ジャンルの中では、ノーズが高く品格あるデザインが評判。北米で爆発的ヒットになり、日本でも月3000台以上の好調な売れ行きだ。
 このロイヤルトレンドといわれる流れが意味するものは何か?
 戦後の大量消費社会が行き着いた先が、地球環境破壊、格差社会だった。その打開策として、古きよき時代の、強い者が弱者を守るという倫理観や、持続可能な「ロハス」な生活などが見直されている。
 ファッションでは、そこに魅力や輝きを感じさせることが必要だ。そこで注目されたのが、かつての貴族や富裕層がもっていたオーラなのだろう。
 第2次大戦が終わって荒廃した世界に、クリスチャン・ディオールのニュールックが大ブームになった。耐乏から開放され、贅沢(ぜいたく)に生地を使ったロイヤルな感覚が新鮮だったからだ。
 ロイヤルなトレンドの復活は、価値崩壊の転換期に現れる過去の気高き知恵への無意識のあこがれなのかもしれない。
朝日新聞 - 2007年1月28日