「丸井」来秋、有楽町に開業 東京・銀座の百貨店、改装・増床


東京でも有数の百貨店激戦区「銀座・有楽町エリア」で、各店の改装や増床計画がめじろ押しだ。若い女性の絶大な支持を集め勢いに乗る丸井が、2007年秋にJR有楽町駅前に開業し乗り込んでくることが、各店を改装や増床へと駆り立てている。なかでも、丸井と隣接する有楽町西武の危機感は強い。

 「(丸井の進出は)25年間温め続け、ようやく実現した悲願。相当なパワーを持っているはず。その前にわれわれの強みを明確にしたかった」

 丸井と隣接することになる有楽町西武の田中世津子店長(53)は、警戒感をあらわにする。

 同店は9月に33億円をかけ11年ぶりの全面改装に踏み切った。A館とB館をそれぞれ「ファッション館」と「ビューティー館」に明確に色分けし、常連客でさえ戸惑うほど店内を一変させた。

 ファッション館では、若者に人気の大手セレクトショップ「ユナイテッドアローズ」や「トゥモローランド」の売り場面積を大幅に広げた。

 セレクトショップは、さまざまなブランドからえりすぐりの品を集めたお店で、バイヤーの腕が物を言う業態だ。

 百貨店の生命線でもある品ぞろえを外部に委ねる形になるが、田中店長は、「バイヤーを育成できていないわれわれの責任。中途半端な品ぞろえになるぐらいなら、外部の目利きにまかせた方が消費者に親切」と、意に介しない。

 ビューティー館は、「パーツを光らせる」「細部にこだわる」がテーマ。「耳の穴エステ」や「唇エステ」など多彩な美容サービスを提供する場を設けることで、従来の画一的な売り場のイメージを刷新した、昼休みにも利用できる15分コースを設けるなどの心配りが的中し、予約が殺到している。

 改装後の3カ月の同店の売上高は、前年同月比20%台のプラスが続く。田中店長は、「グレード感と安心感が格段に高まった。ブランドとして、丸井に対抗できる店になった」と、手応えを感じている。

 来年秋にオープンする「丸井有楽町店(仮称)」は、駅前再開発で誕生する2棟構成の大型商業施設のうち1棟の核テナントとして入居。地下1階から地上8階までを使用する。得意の「若者向けファッション」中心の店づくりを計画しているが、売り場構成など具体的な中身はベールにつつまれており、既存勢力の百貨店は戦々恐々としている。

 銀座では、グッチやエルメス、ブルガリなど、百貨店にもテンナト入居する高級ブランドが、単独の直営店を次々にオープンしており、ライバルは増えるばかり。

 松屋銀座も、西武と同じ9月に5年ぶりに全面改装した。「銀座のランドマークに」というコンセプトに基づき、外観を白を使ったガラス張りのデザインに一新。婦人下着売り場を銀座地区で最大規模の約380平方メートルに広げたほか、食料品売り場にも他店にはない高級洋風総菜店を誘致するなど、「立地を意識し、上質感のある店をつくった」(同店)という。

 売り場構成も買い回りを意識し、「下着から靴から、洋服まで同じフロアで買えるように」と工夫を凝らした。

 若者向けファッションで丸井とバッティングするプランタン銀座は、丸井の開業に合わせ来年9月に1984年の開業以来となる大規模な改装に踏み切る。食品フロアの刷新と、カルチャーサロンなどの充実が目玉。銀座三越は9月に1階を40年ぶりにリニューアル。2010年春には新館をオープンし、売り場面積を倍増させる予定だ。銀座松坂屋も、超高層ビルへの再開発は頓挫(とんざ)したものの、建て替えによる大幅増床を検討している。

 「銀座は、知的で上質志向が強い街」というのが各店の共通認識。銀座に若者文化を持ち込もうとする丸井に対し、大人の街を演出し対抗する既存店。銀座・有楽町を舞台にした新たな“百貨店ウオーズ”が幕を開ける。(飯田耕司)


【写真】9月の全面改装で、「グレード感が高まった」と自信をみせる有楽町西武の田中世津子店長

フジサンケイ ビジネスアイ - 2006年12月8日