現代的なエレガンス探る 07年秋冬パリコレ

 07年秋冬パリ・メンズコレクションが1月26日から5日間開かれた。ここ数年のトレンドだった細身のシルエットに変化の兆しが現れる一方、スポーツの要素や未来的感覚を採り入れて、現代的なエレガンスを探る動きがひろがっている。

 ディオール・オムのショーが観客を驚かせた。ここ数年、デザイナーのエディ・スリマンが作り出す少年のように細いラインの服が話題だったが、今回そのシルエットが変わった。

 上着のすそにドーティー(腰布)をつけたスーツや、タイトなジャケットとボリューム感のあるサルエルパンツといった組み合わせが目についた。腰からひざにかけてふくらみを持たせた新しいディオール・スタイルが、再び世界のメンズファッションを席巻するかどうか。

 パリのメンズコレクションでは近年、モード系と大人の正統クラシック系の接近が続いている。今季は、エレガンスを歴史に学び、現代的に解釈しようとする服が目についた。

 アン・ドゥムルメステールは、20世紀初頭英国のフォーマルウエアに着想。ジャケットに詰め物をしたり、すそに大胆なギャザーをつけたり、カジュアルに崩している。シルエットでも、タイトなパンツに幅広のハーフパンツを重ねるなど新しい提案を見せた。

 ランバンはクラシックなジャケットに細身のパンツで、胸元にはコサージュを飾る。キャップやスニーカーと組み合わせて、優美な中にスポーツ感覚を採り入れた。

 エルメスは上質なスーツが並ぶコレクションに、微妙な青が美しいクロコダイルのブルゾンを差し込んだ。端正なスーツに色彩の微妙なグラデーションを施したルイ・ヴィトンのショーも印象的だった。

 エレガンスに未来的な感覚を融合して、新境地を感じさせたのがラフ・シモンズ。ウールを表面加工し、ジャケットやパンツのすそを光沢感のある別素材で切り替えるなどの技法で、メタリックな輝きを与える。上腕部までおおう手袋はロボットの腕のようだが、どこかレトロな味わい。60年代が夢想した21世紀の服といった印象だ。

 日本勢では、コムデギャルソンが「エレガントな生き方」を問いかけた。日本ではなじみがないが、70年代ロンドンで一世を風靡(ふうび)したアーティストら4人をイメージして、中近東やアフリカの要素を採り入れた服を発表。

 ショーではその4人もランウエーを歩いた。「マイウエーをつらぬいた強い生き方」(デザイナー川久保玲)にオマージュをささげた。

 ヨウジヤマモトは、ウールとニットの切り替えを駆使したテーラードのジャケットやコートを見せた。異素材を組み合わせて、左右のバランスをあえて崩した。「仮面ライダー」など石ノ森章太郎の漫画のキャラクターを編み込んだニットには、観客から「素晴らしい」と歓声があがった。

朝日新聞 - 2007年2月11日