エルメス6代目会長・トマ氏来日

今年3月にエルメスの6代目会長に就任したパトリック・トマさん(59)は、創業者家以外から初めてのトップ就任として注目されている。先月末に増床リニューアルした東京・銀座店オープンのため来日した。

 1837年の創業。エルメスはフランスのしにせトップブランドの中では唯一の家族系独立企業だ。トマさんは89年から先代のジャンルイ・デュマ会長のもとで経営の手腕と美的センスを発揮し、請われての就任だった。

 「エルメスは家族性が強いが、企業として。血縁という意味ではない」とトマさん。

 その家族性は、銀座店でも強く表現されている。今回の増改築では、顧客のためのサロンやカフェ、アートの展示スペースなどを充実させた。「エルメスの家にお客を招いて、家のことを理解していただきたいという発想です」という。

 多くのしにせブランドが巨大グループに系列化された中で、エルメスの独立性を支えているのは「規模の大きさをあえて目指さないこと。そして伝統的な職人の手をあくまで重視する姿勢」と説明する。

 「時を超えて使える商品を、ていねいに作っていくというシンプルなビジョンを守っていきたい」。ただし、商品の時々のアイデアは「生まれて、そして消えていく」のだという。

 「結局、エルメスという会社のモデルはラ・ヴィ(人生)なのです」。

朝日新聞 - 2006年11月20日